小脳出血後遺症の失調は厄介
失調があってもリハビリで歩行能力は回復するの?
小脳出血の後遺症
小脳出血の後遺症は以下のとおりです。
- 四肢・体幹の運動失調
- 酩酊様歩行
- 筋緊張低下
- 構音障害(断綴性言語)
- 平衡障害
- 眼球運動障害(眼振など)
詳しくはこちらの記事を参照下さい、
▶︎ 左小脳出血の後遺症で右片麻痺?麻痺と失調症状の違いとは?
運動失調とは
「明らかな麻痺がないにもかかわらず、意図した運動や姿勢を正常に保つための協調運動ができない状態」
を言います。
要するに
運動の予測的・適応的な制御が困難となります。
これが厄介な後遺症なのです。
ちなみに
小脳半球の障害では同側の手足に運動失調が、
小脳虫部では体幹の運動失調、構音障害、眼振が出現します。
左右の小脳半球の間に虫部があります。
下の画像は右の小脳半球およびわずかに虫部まで及んでいる出血です。(CT画像では左右が反転して写るのであしからず)
この場合は右の手足に運動失調が出現します。体幹失調も認められるでしょう。
次の画像はかなり広範な小脳出血になります。虫部を中心に出血し周囲に著明な脳浮腫も出現しています。この場合は意識障害が出現し、手術適応になる可能性が高いです。失調も四肢・体幹に認められるでしょう。
失調に対するリハビリとは?
一般的な治療法は以下のとおり。
- 弾性包帯緊縛法(腹帯などをお腹に巻くことで体幹失調を軽減する)
- 重錘負荷法
- フレンケル法(手や足に重りをつけて臥位や座位、立位で繰り返し行う運動)
- 固有感覚受容性神経筋促通手技
四肢・体幹失調が重度の場合は以下のポイントを重視してリハビリを進めていきます。
失調に対するリハビリのポイント
- 支持面の多い安定した環境で手足の緊張を調節し、スムーズな動きを誘導する。(はじめは臥位(寝た状態)から運動すると良い)
- 安定した姿勢から徐々に難易度を上げていく。(臥位→あぐら→四つ這い→膝立ち→端座位)
- 難易度は低めにして成功体験を多くする。可能な限り動揺することなく自分の身体をスムーズに動かせることが重要。
- 視覚を代償的に用いた運動学習(動作反復による運動プログラムの修正)
- 正常運動パターンの中で正常運動の感覚を多く経験させること。
- 鏡を見て自分の体幹・手足の位置関係を把握する。姿勢を再認識した状態で動作をすること。
上記のポイントを押さえてベースを築き、立位・歩行のステップへ移っていきます。
歩行の予後
歩行訓練開始当初は平行棒内歩行で鏡を見ながら行うのが基本です。
とにかく安定した環境を作るためには平行棒内で歩くのが1番です。慣れてきたら徐々に歩行器などを用いていきます。
また
体幹や手足の末梢に弾性包帯を巻いたり、手足に重錘を付けることで圧迫や重量による感覚入力を利用し、失調症状を抑えることができます。その状態で歩行訓練を行うのも効果的です。
小脳虫部にまで及ぶ広範な出血は歩行の予後は不良です。(小脳半球の方が失調症状や歩行時のふらつきは軽いことが多いです。)
以下の要因の影響を強く受けます。
- 血腫の大きさ
- 年齢
- めまい、眼振、複視などの視覚障害
最後に
長期経過とともに徐々に失調症状が改善したり、失調のある状態での体の動かし方を覚えることで日常生活の自立度はかなりのレベルまで向上するという報告もあります。歩行自立できないからといっても退院後のリハビリを根強く継続することが今後の歩行予後を大きく左右するといっても過言ではありません。
以上、参考になれば幸いです。
でわ。
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