脳梗塞や脳出血の後遺症により重度の麻痺を呈した患者は長下肢装具と呼ばれる長い装具を作成することが多いです。麻痺が重たい場合でもこの装具を使えばリハビリ開始当初から立位・歩行訓練を行うことができます。
長下肢装具とは?
名前のとおり膝上まで覆うほどの長い装具です。
knee ankle foot orthosis:KAFOとも言われます。(下写真)
両側に金属の支柱がついており、それなりに重量があります。(1.3〜1.5kgくらい)
(出典:http://www.arizono-gishi.com/products/sougu/kashi_sougu/products-02-01.html)
装着するとこんな感じです。(少し古いタイプのものですが)
ちなみにこの写真だと膝は少し曲がっていますが、実際だと膝はしっかり伸びた位置で固定されています。
目的
膝関節と足関節を固定することで膝折れを防止し、麻痺が重度の患者でも早期から立位・歩行訓練を開始することができます。
要は、
下肢の関節の自由度を制限することで歩きやすくしているのです。
重度の麻痺があるのに股関節も膝関節も足関節もすべて同時にコントロールするのは難しすぎますよね。
長下肢装具を装着すれば、患者は股関節及びその上の体幹をコントロールするだけで立位・歩行訓練が可能となります。(もちろん最初は理学療法士の介助のもとですが)
適応
重度の麻痺が適応と言われても、麻痺は個人差もありますし分かりにくいですよね。
弛緩していてピクリとも動かせない場合は間違いなく長下肢装具の適応となります。あとは少ししか膝が伸ばせない場合や、体幹筋が弱くて座位姿勢を保持できない場合でも適応となります。
種類
病院が扱う業者によって種類は様々ですが、基本的な構造や原理はおおよそ同じとなります。両側に金属の支柱があるタイプがほとんどです。
なかには膝から下が後方平板支柱になっているタイプもあります。(下写真)
値段の相場は?
値段は病院が扱う業者やメーカー、患者自身の体格、パーツの素材などによって異なりますが、おおよその相場は12〜20万円くらいです。かなり幅がありますよね。
20万!?高すぎて買えないわ!
と思った方はこちらの記事も参考に。
▶︎ 治療用装具の代金は全額負担なの?保険適用?返金の手続きは?
ちなみに1番最初の写真の長下肢装具が18〜20万円くらいです。
足首の部分のジョイントが油圧で制御できる高機能のタイプです。より自然な歩行に近づけて歩くことができるため、より効率的に歩行訓練が行えるとのこと。(装具の名前はGait Solution 長下肢装具と言います)
まとめです。
- 長下肢装具は重度麻痺や体幹の弱い患者に適応となる。
- 早期に歩行訓練が開始できる。
- 値段は12〜20万円くらい。
長下肢装具はあくまでも治療用の装具に過ぎず、麻痺の回復や歩行が上手くなったら短下肢装具に変更していくことがほとんどです。
▶︎【脳梗塞片麻痺の歩行リハビリ】短下肢装具の種類や値段は?
長下肢装具を装着して自宅退院することなどほぼ皆無です。
最終的に使わないなら作らなくてもいいんじゃない?
って思うかもしれません。
しかし、早期に長下肢装具を作成することで、効率的な歩行訓練ができ、結果、入院期間の短縮にもつながります。麻痺の回復過程に合わせて立位・歩行訓練をするなら長下肢装具はできるだけ早く作った方が良いと思います。
▶︎ 脳卒中の麻痺が効率的に回復しやすい期間は?その治療法とは?
▶︎ 脳卒中の麻痺は回復する?3つの回復過程とその期間について
以上、参考になれば幸いです。
でわ。