脳梗塞後遺症の痙縮に対するボトックス注射は痛いって本当?

どんな副作用が出る?ボトックス治療を行う効果的なタイミングは?

治療で効果が出なかったときの原因は?



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痙縮に対するボツリヌス療法

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)の後遺症で代表的な痙縮(筋肉のこわばり、つっぱり)は関節拘縮や痛みの原因となり日常生活の妨げとなります。

2010年にボツリヌス療法が保険適応となって以降、使用頻度は近年増加傾向にあります。脳卒中ガイドラインにおいても痙縮による関節可動域制限に対して「グレードA」とその使用が推奨されています。

詳しくはこちらの記事を参考に。
脳出血後遺症の麻痺の回復にはボトックスとリハビリの併用が効果的

 

注射は痛い?

「痛い」か「痛くない」かの2択で問えば大部分の患者は「痛い」と答える人が大半です。

ただ

「我慢できる痛み」であるからこそ、反復投与をされる方が非常に多いです。

治療患者によって痛みの感受性はさまざまですが、痛みの程度は下記の要因によって左右されます。

  1. 針の太さ
  2. 注射する部位
  3. 感覚障害の有無
  4. 施術者の熟練度

1. 針の太さ

ボツリヌス毒度は痙縮を認める筋肉に注射で直接注入します。その注射器の針が太ければ太いほど痛みを強く感じる傾向にあります。ボツリヌス毒素自体は粘性の低い液体なので細い針でも十分目的の筋肉に注入できます。

痛みを少しでも抑えたい方は細い針で注射してもらいましょう。(深部の筋肉は針の長さも必要となるため、安全性を考慮して太い針を使用します)

2. 注射する部位

感覚受容器が集中して分布している部位は痛いです。例えば足の裏。

内反尖足に伴ってクロウトゥ(足の指の過度な屈曲)が生じる患者は足底筋の緊張が高いことが多く、その場合は足の裏にも注射をします。これがまた痛いんです。手のひらも同様の傾向があります。四肢の末梢にある手や足は絶えず感覚入力される敏感な部位なので、注射による痛みも感じやすいです。逆に太ももなどの大きな筋肉は痛みが少ないです。

3. 感覚障害の有無

感覚障害によって感覚が鈍くなっている患者は問題ないが、逆に知覚過敏になっている患者では痛みは強い可能性が高いです。

4. 施術者の熟練度

これに関しては治療件数が多いかどうかです。注射器の扱いが上手く、ボトックス治療に精通している医師がいる病院を探すしかありません。

 

副作用は?

主な副作用は以下のとおりです。

  • 全身の脱力感
  • 筋力低下
  • めまい
  • 吐き気
  • 呼吸苦

脳卒中患者を対象とした国内臨床試験(106例)において、約15%の患者に上記副作用のいずれかが確認されています。症状は一時的ですぐに治りますが、長引く場合は医師に相談する必要があります。

注射した日は自動車の運転などは控えるべきです。

 

注射をする効果的なタイミング

文献的には、脳卒中発症から

  • 6週間以上
  • 3ヵ月以上
  • 6ヵ月以上

など、さまざまな開始時期の報告がありますが、どの時期においても痙縮の軽減効果が認められています。

日本国内では一般的に発症後6ヶ月以上経過し、回復期リハビリ病院を退院された頃にボトックス注射を検討する患者が多いようです。

 

効果が出ないときに考えられる原因は?

ボトックス注射を行っても十分に改善効果が得られなかった場合は以下の原因が考えられます。

  • 注射すべき筋肉に注射できていない(医師の技術不足)
  • 痙縮の原因となる筋肉に注射できていない(医師の考察不足)
  • 投与量が足りない。
  • 筋肉自体が繊維化(変性)している。または関節が既に拘縮している。
  • ボツリヌス毒素への抗体が産生された(反復投与の場合のみ)

もし前回の注射で思うような効果が得られなかった人は、上記を参考にして医師に相談してみると良いでしょう。

 

まとめ

脳卒中後遺症の痙縮は麻痺の回復を阻害するだけでなく、放っておくと痛みやしびれを誘発する恐れがあるため、早めの対処が必要です。

一時のボトックス注射の痛みに耐えれば、痙縮による痛みの誘発を抑えられるかもしれません。

最近、麻痺した手足がこわばるようになってきたと感じているあなた。

一度ご検討してみては?