ボトックスは1回投与しただけでは効果ない?

ボトックス注射のおおよその費用や反復投与の効果・必要性について詳しく説明していきます。



痙縮治療のボトックス

ボツリヌストキシン(A型ボツリヌス毒素)という薬を筋肉内に注射し、痙縮をやわらげる治療法です

「ボトックス注射」「ボツリヌス療法」とも言われています。

脳出血後遺症の麻痺の回復にはボトックスとリハビリの併用が効果的

日本では2010年より保険適応となり、使用頻度は近年増加傾向にあります。脳卒中ガイドラインにおいても痙縮による関節可動域制限に対して「グレードA:行うよう強く勧められる」とその使用が推奨されています。

ボトックスによる痙縮コントロールにより以下のような効果が期待できます。

  • 疼痛、筋スパズム、連合反応に関連した不随意運動などの症状を改善させる。
  • 歩行などの移動や移乗動作、日常生活動作などの能力を改善させる。
  • 移動体位変換、更衣動作などの介護負担を軽減させる。
  • 拘縮および変形を予防し、装具を装着しやすくさせる。
  • ボディイメージを改善させる。
  • 抗痙縮薬の軽減やリハビリ効果を増強させる。

 

 

費用について

ボツリヌス療法の保険適用疾患は以下のとおりです。

  • 痙性斜頸(けいせいしゃけい):首や肩の筋肉の張りによる異常姿勢
  • 眼瞼痙攣
  • 片側顔面痙攣
  • 上肢痙縮、下肢痙縮
  • 2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足
  • 重度の原発性腋窩多汗症

脳卒中後遺症などによる上下肢の痙縮は保険適応となります。

ボトックス注射のみを行った場合の概算の金額は下表のとおりです。実際は診察、検査、薬の処方などの費用も加算されるため費用は下表と異なります。(あくまでも参考までに)

ボトックス費用

自己負担の限度額については下記サイトを参照ください。
全国健康保険協会「医療費が高額になりそうなとき」

ここでいう50単位〜360単位の「単位」はボツリヌストキシンの投与量を示します。投与できる単位には上限があります。(2018年5月時点)

  • 上肢痙縮に対する最大投与量は240単位
  • 下肢痙縮に対する最大投与量は300単位
  • 上下肢同時に投与する場合の上限は360単位(例:上肢140単位、下肢220単位)※3ヵ月間の累積投与量は360単位以内と上限があるため。

上肢痙縮の治療対象となる主な筋とその投与量

  • 大胸筋、広背筋、円筋群、肩甲下筋、菱形筋、肩甲部の筋:40〜100単位
  • 上腕二頭筋、上腕筋、腕橈骨筋:100単位以上
  • 円回内筋、方形回内筋:20〜30単位
  • 尺側・橈側手根屈筋、浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋:20〜50単位
  • 母指対立筋・内転筋、短母指屈筋、虫様筋、骨間筋:5〜10単位

下肢痙縮の治療対象となる主な筋とその投与量

  • 内転筋群:80〜150単位
  • 大腰筋、腸骨筋、ハムストリングス:80〜200単位
  • 大腿四頭筋:20〜80単位
  • 腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋:80〜100単位
  • 長母指屈筋、長指屈筋:10〜40単位
  • 長母指伸筋:5〜40単位

上肢、下肢のどちらかに投与する人もいますが、だいたいどちらも投与するケースが多いです。

痙縮の程度にもよりますが、脳卒中片麻痺患者の場合は200単位以上の投与が最も一般的と言えるでしょう。痙縮の強いケースに至っては、反復投与の度に上下肢合計360単位を投与しています。

自己負担額は人それぞれですが、全体的に高額な治療となります。身体障害者手帳による医療費の自己負担分の助成が受けられない方には経済的に苦しい治療かもしれません。(実際は身体障害者手帳による助成を受けている人がほとんどですが)

 

反復投与の効果

ボツリヌス療法の効果は

一般的に2〜3日で現れ、1〜2週間後に安定し、3〜4ヶ月間程度は持続します(期間には個人差があります)

ボツリヌス療法はあくまで対症療法であり、神経伝達阻害作用は時間経過とともに回復します。3〜4ヶ月たった頃に手足のこわばりを感じてきたら再投与が必要となります。ボツリヌス療法を受けているほとんどの患者は年3〜4回ペースで反復投与を行なっています。

ボトックスの反復投与によって、緊張の和らいだ状態を保ちつつリハビリに取り組むのが主流となっています。徐々に日常生活動作に変化がある患者もいます。

副作用

ボツリヌス療法に伴うボツリヌス菌への抗体産生の頻度はごく低いとされますが、高用量投与を短期間のうちに反復投与するとリスクが高まるといわれているため、必要最低限の量を可能な限り間隔をあけて投与することが重要となります。投与しすぎても効果が薄くなるだけです。やはり3カ月以内の再投与は避けるべき。

 

まとめ

脳卒中後遺症の上下肢痙縮に対するボトックスの費用はわりと高額であることがわかりました。【表に記した費用はあくまで概算なので参考程度に。詳細はかかりつけの医療機関でお尋ねください。】

治療対象の筋肉の大きさや痙縮の程度によって単位数も増減します。単純に体の大きい人もそれに応じて単位数は増えるのかもしれません。

そして、効果を持続させるためにボトックスの反復投与は必須。年3〜4回ペースで反復投与することが多いため費用もかさんでいきます…

ただ痙縮が軽減されることで痛みが軽減したり、リハビリとの相乗効果が期待できたりとメリットの方が大きいのは確かです。迷われている方は是非ご検討なさってみてください。(ただ注射のときは少し痛いかな..?)

以上、参考になれば幸いです。