脳梗塞や脳出血の後遺症には運動麻痺や感覚障害、言語障害などの他にも、意欲低下や自発性低下、抑うつ状態といった様々な精神症状がみられます。その中でも高頻度にみられるのがうつ病です。発生頻度は脳卒中患者の少なくとも30%にみられると言われています。
脳卒中後のうつ病(Post Stroke Depression:PSD)
PSDの発症頻度は脳卒中患者の約23〜40%
PSDの発症時期は脳卒中発症後の2年間に多く、特に脳卒中発症から半年以内のリハビリを行う時期に多く発症すると言われています。そしてPSDはリハビリの阻害因子となります。
PSDは麻痺の回復を妨害
リハビリは患者自身のモチベーションに大きく左右されます。患者自身にやる気が無く、運動してもらえなければ為す術がありません。
麻痺を回復させるための川平法(促通反復療法)を行う場合、患者自身の積極的な姿勢がなければ効果は期待できません。脳卒中発症〜6ヶ月の伸び盛りの時期にPSDになってしまっては麻痺の回復は望めません。
そのためには、PSDの予防または早期にPSDを診断して治療を開始することが重要となります。
PSDの予防と治療
PSDを予防するためにはPSDの危険因子を把握しましょう。
- 年齢(若年)と性別(女性)
- うつの既往
- その他の精神病
- 麻痺の重症度
- 認知症
女性の方がPSDのリスクは高いようです。また過去に精神障害の既往歴があるかどうかも重要な危険因子となります。逆に、男性の場合は麻痺の重症度が危険因子となりやすい傾向があります。麻痺が重くてまったく動かせない場合はPSDの危険性が高くなるかも。
抗うつ薬で予防
PSDのリスクが高いと分かったら早期から抗うつ薬治療を開始することで予防効果が期待できるとの報告があります。しかし、長期内服となるため、ある程度の「副作用」は覚悟しないといけません。
PSDかな?と思ったら
自己評価式の簡易評価があります。
→「 SDS(うつ病自己評価尺度)」
各20項目の点数に◯をつけ、合計点が高いほど「うつ傾向」になります。59点以上であればすぐに医師に相談して抗うつ薬の治療を検討すべきです。
ちなみに、
反復経頭蓋磁気刺激(rTMS:repetitive transcranial magnetic stimulation)の使用はうつ症状の減少と関連しているという報告もあります。(参考までにこちらの記事も:脳梗塞後遺症の麻痺はTMSで治る?リハビリとの併用効果は?)
まとめです。
- 脳卒中後のうつ病(PSD)はリハビリの阻害因子となる
- PSD危険因子の把握、SDS(うつ病自己評価尺度)でPSDを早期発見する
- 抗うつ薬治療を早期に開始してPSDの悪化を防ぐ
家族が脳卒中を発症したら必ずPSDになっていないか、またはPSDになる可能性が高いかを確認してください。
うつ病は麻痺の機能回復との関連が強いので見逃せませんよ。
以上、参考になれば幸いです。
でわ。