脳梗塞で退院後に入れる施設の種類や特徴は?

脳梗塞患者におすすめの施設は?

気になる月額費用や医療・看護体制、リハビリの有無について詳しく解説します。



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脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)を発症した後の流れは大まかには以下のとおりです。

  1. 急性期病院で治療
  2. 回復期リハビリテーション病院へ転院
  3. 自宅へ退院

ただ

すべての患者が自宅退院できるわけではありません。

自宅退院できる患者は以下の特徴があります。

  • 若い
  • 麻痺などの後遺症が軽い
  • 認知機能が保たれている
  • 高次脳機能障害がない、または軽い
  • 家族の助けが得られる(介護力がある)

※金銭面の問題で自宅退院を余儀なくされる患者もいます。

裏を返せば、

高齢で麻痺が重く、認知症や高次脳機能障害がある患者は日常生活に介護が必要となるため、自宅退院が困難となります。介護が必要となっても、(介護サービスの利用を大前提として)家族の協力が得られれば自宅退院は可能です。

ただ、
「家族が忙しくて在宅介護できない、遠方にいて同居が困難、関係が疎遠、主介護者が高齢で介護力がない」など様々な問題により家族の助けが得られないケースは非常に多いです。

病院から退院を迫られた自宅退院できない患者はどこに行けば良いのでしょうか?

施設の種類

ここでは自宅退院が叶わなかった脳卒中患者が退院後に入れる施設についてご紹介します。

施設を探すにあたって、気になる入所条件や費用、体制(医学的処置、看護・介護体制)、リハビリの有無などの施設の特徴や「脳卒中患者にとっておすすめできる施設かどうか」という視点で私なりの見解を述べていきます。
※費用はあくまで目安なので参考程度に。また介護サービス費は介護度に比例して高くなります。

介護老人保健施設(老健)

厚生労働省が管轄する公的な介護保険施設。

入所条件

要介護1〜5が対象(40歳以上64歳以下の場合でも要介護認定がおりていれば可)看護師が24時間常駐していない施設では医療行為の種類(痰の吸引や点滴)によっては入所できないこともある。夜間の痰の吸引や点滴など医療行為の種類によっては受け入れができないケースもある。

初期費用

なし

月額費用

9~20万円(居住費、食費、介護サービス費、サービス加算、その他費用)居住費と食費については減免措置が設定されており、入居者の収入によって4段階に分けられる。

体制

常勤医師、看護師配置により医療ケアは充実している。看護師が24時間常駐しているところも多く、インシュリンの注射や胃ろうなどの経管栄養、痰の吸引にも対応している。老健に透析クリニックが併設していれば透析が必要な脳卒中患者も受け入れてもらえる。

リハビリ

理学療法士や作業療法士による週2回以上のリハビリを提供。1回のリハビリの時間は20~30分程度。施設によっては、入所してから3ヶ月間は週3回以上の短期集中リハビリを提供しているところもある。

平均在所日数

100.6日(平成26年時点)自宅復帰を目標とするため、入居期間は原則として3~6ヶ月と定められている。「リハビリがうまく進まない」「家族の受け入れ態勢が整わない」などの理由で期間内に自宅へ帰れないケースも多いが、いずれは退去させられる。特別養護老人ホームの入居待ちとして利用する人も多い。

「介護療養型老人保健施設」ではターミナルケアや看取りも行っているため、亡くなるまで入所することが可能。ただ、地域によってその数は少なく、費用も従来のタイプよりやや高めになる。

脳卒中患者におすすめできる?

医療ケアもリハビリも充実しているのでおすすめです。費用の減免措置もあるので費用対効果は高いのではないでしょうか。できるなら回復期リハビリ病院を退院した流れで入所してリハビリを継続したいですね。入所期間には限りがあるのであくまで後方施設を見据えた仲介施設という役割になります。前述したように特養待ちのつなぎとして入所するケースが圧倒的に多いです。ただ施設によっては1年以上平気で入所している方もいるみたいです。

 

特別養護老人ホーム(特養)

公的な介護保険施設の1つ。

入居条件

65歳以上で要介護3以上の高齢者(40歳~64歳でも要介護3以上なら可)

要介護1~2でも在宅での介護が困難な状態が見受けられる場合は特例により入居が可能となる場合もある

初期費用

なし

月額費用

6~15万円(居住費、食費、介護サービス費、サービス加算、その他費用)所得に応じた費用の減免制度あり。

体制

医師の常勤は義務付けられていない。利用者3人に対して介護職員及び看護職員を1人以上配置。介護スタッフは24時間常駐し、必要な時に介護を受けられる。

リハビリ

常勤している理学療法士や作業療法士によるリハビリを提供。スタッフ数が少ないためリハビリ時間は少ない。かわりに介護スタッフが手芸や習字など手先を使った作業や身体を使うゲームなど、リハビリに繋がるレクリエーションを行うところが多い。

平均在所日数

長期入所が前提であり、原則として終身にわたり介護を受けることができる。状態悪化により退所となり病院へ入院する。

脳卒中患者におすすめできる?

医療ケアもリハビリも老健より劣ります。ただそのあたりは施設によってまちまちです。看護師が24時間配置されているところならば安心できます。民間の老人ホームと比べると費用は安いです。病院から老健を経て特養へ入所するケースが王道ですね。最近では「看取り」に取り組む施設も増えており、最後まで施設で診てもらうこともできます。

 

介護療養型医療施設

介護療養型医療施設では介護保険、医療療養型医療施設では医療保険が適用される。主に医療法人が運営する施設。ここでは介護療養型医療施設について説明する。

入所条件

医学的管理が必要な要介護1〜5の65歳以上の高齢者が対象(65歳以下でも介護認定がおりている場合は相談可)伝染病などの治療が必要な患者は受け入れてもらえない可能性があるため施設に要確認。

初期費用

なし

月額費用

9~17万円(居住費、食費、介護療養型医療施設サービス費、サービス加算、その他費用)個室の場合は約25万円。

体制

医師による診療、医師や看護職員による療養上の医療ケアや看護、介護職員による介護などを提供。入居者100人に対して医師は3人常勤、常勤の看護職員・介護職員はそれぞれ入居者6人に対して1人以上の配置が義務付けられており、介護施設の中では最も医療ケアが充実している。介護療養型医療施設は、病院に併設されていることも多く設備は通常の入院病床に近い環境となっている。

リハビリ

理学療法士や作業療法士による維持期リハビリテーションを提供。脳卒中発症日との兼ね合いでリハビリの頻度は異なる。

平均在所日数

特別養護老人ホームのように終身制ではないため状態が改善してきた場合には退所を求められることもある。

要注意!

介護療養型医療施設は2024年3月に廃止され、介護医療院が新設されることになった。長期の入所を検討される場合は注意が必要だ。

脳卒中患者におすすめできる?

設備は通常の入院病床に近いので、比較的重度の要介護者に対し、充実した医療処置とリハビリを提供してくれます。費用も老健より少し安く、長期の療養も可能です。意識障害や褥瘡、痰の吸引、経管栄養などがある重度の脳卒中患者にはおすすめです。ただ、2024年に廃止される施設なので今後どのようになるかが少々不安です。入所の際には今後の方向性を施設に問い合わせる必要があります。

 

 

 

ここからは民間企業が運営する施設です。

介護付き有料老人ホーム

都道府県の認可を受けた有料老人ホーム。

入所基準

「入居時自立(介護認定なし)」や「自立~要介護5まで」、「要支援以上」、「要介護1~5のみ」などホームによってさまざま。

初期費用

0〜数千万円

月額費用

15~50万円(居住費、食費、介護サービス費、サービス加算、その他費用)

費用が高額なところはスタッフの人員体制や設備が充実している。トレーニングジムやプール、温泉などがあるところも。診療所が併設され医師が常駐しているところもある。

体制

「介護付き」と称しているため、24時間介護スタッフが常駐し、掃除や洗濯など身の回りの世話や、食事や入浴、排せつなどの介助サービスが受けられます。日中も看護師が常駐している。協力医療機関との提携による定期的な健康診断、訪問診療も行われ、内科や歯科については定期的に医師の診断を受ける機会がある。

リハビリ

理学療法士や作業療法士が常勤していればリハビリを受けることができる。

平均在所日数

終身制。

脳卒中患者におすすめできる?

金額に応じて介護サービスや設備、医師・看護師・リハビリの常駐など千差万別。重度の脳卒中患者も対応可能なので金銭的に余裕のある方にはおすすめです。外観、内観がホテルみたいなところもあります。

 

住宅型有料老人ホーム

介護付き有料老人ホームよりも安価。

入所基準

自立した60歳以上の高齢者。外部の介護サービスを利用することです自立〜軽度の要介護者も受け入れ可能。

初期費用

0~数千万円

月額費用

12~30万(居住費、食費、その他費用)

体制

基本的には自立している高齢者が多いためサービスの提供は簡単なものが多い。施設スタッフによる見守り、食事・掃除・洗濯の世話など。別途費用による外部サービスで訪問介護や通所介護を利用すれば介護を受けることができる。

リハビリ

希望があれば別途費用による外部サービスで訪問リハビリを受けることができる。

平均在所日数

基本的には終身制だが、医療依存度が高くなると退去しなくてはならないこともある。

脳卒中患者におすすめできる?

介護付き有料老人ホームより安価なのでより自立度の高い脳卒中患者はこちらの方がおすすめです。

 

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

サービス付き高齢者向け住宅には「一般型」と「介護型」の二種類がある。脳卒中患者の場合は「介護型」に入居することがほとんど。ここでは「介護型」について説明する。

入所基準

60歳以上の高齢者、あるいは要介護者認定を受けた60歳未満の方。

初期費用

数百万〜数千万円

月額費用

5~25万円(管理費、食費、光熱費含む)別途費用として介護保険サービスの自己負担分もある。

体制

常駐するスタッフは医療・介護の有資格者であり、安否確認や介護、生活全般の相談に対応してくれる。訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービス事業所が併設されているところが多く、必要な介護サービスが受けられる。

リハビリ

理学療法士や作業療法士が在籍していれば受けられるが、主には訪問リハビリや併設しているデイケアなどでリハビリを受けることが多い。

平均在所日数

基本的に期限はないが、介護体制が不十分となりやすいため、介護度の重度化や認知症症状が進行した場合は住み続けることが困難となる。看護師常駐も義務付けられていないので、終身で利用するにも体制が不十分。

脳卒中患者におすすめできる?

介護付き有料老人ホームと同様のサービスが提供されるため、安価なサ高住の方が脳卒中患者(軽度から中等度)にはおすすめです。

 

グループホーム

比較的身体機能が良好な認知症患者を対象としている。

入所基準

65歳以上の要支援2または要介護1以上の認知症患者、かつ施設のある市町村に住民票があることがことが条件となる。

初期費用

0~数百万円

月額費用

15~30万円

体制

認知症についての正しい知識を持った介護スタッフによる見守り・食事・掃除・洗濯のサポート・機能訓練・緊急時の対応など。アットホームな環境で家事などを行うようにサポートすることで認知症の症状を和らげるのが狙い。

リハビリ

療法士はいないが、主に認知症専門のスタッフが常駐し、レクリエーションも充実している。機能訓練室などの設備が備えられている。

平均在所日数

基本的に期限はないが、身体状態が悪化し、1人で着替え・食事摂取・排泄などができなくなったり、慢性疾患のために日常的な医療ケアが必要になったりすると退去しなくてはならない。

脳卒中患者におすすめできる?

脳卒中により運動麻痺はないが認知機能低下をきたした患者はおすすめです。認知症専門のスタッフによる対応にも安心できる。

 

ケアハウス(軽費老人ホームC型)

社会福祉法人や地方自治体、民間事業者などが運営する福祉施設。助成制度が利用できるため、低所得者の費用負担は比較的軽い。ケアハウスにも「一般型」と「介護型」の二種類がある。脳卒中患者の場合は「介護型」に入居することがほとんど。ここでは「介護型」について説明する。

入所基準

要介護度1以上の65歳以上の高齢者で共同生活ができる方。

初期費用

数十万〜数百万円

月額費用

16~20万円(介護サービス費、居住費・食費・その他日常生活費)介護サービス加算として「個別訓練加算」「医療機関連絡加算」「夜間看護体制加算」などが加算される場合もある。

体制

入浴や食事の介護のほか、機能訓練や医療ケアなどを提供してくれる。看護師・介護士は要⽀援者10⼈につき1名、要介護者3⼈につき1名の配置となっている。

リハビリ

機能訓練室はないところが多い。リハビリは外部の介護サービスに依頼する必要がある。

平均在所日数

基本的には終身制だが、医療・介護体制が不十分であるため、医療依存度が高くなったり介護度が重くなると退去しなくてはならないこともある。

脳卒中患者におすすめできる?

助成制度の利用により低所得者の費用負担は比較的軽く、民間の有料老人ホームと比べると安いです。介護型のケアハウスでは、重度の脳卒中患者でも住み続けることが可能。

 

まとめ:脳卒中患者におすすめの施設は?

費用面と医療ケア、リハビリの充実を考えたら理想は公的な介護保険施設に入所することです。

「介護老人保健施設に入所して特別養護老人ホームの空きを待つ」

または

「介護療養型医療施設に入所して特別養護老人ホームの空きを待つ

がベストだと考えます。
(場合によっては介護療養型医療施設で最後を看取るケースもあります)

ただ、空き状況などもあるため思い通りにいかないことも多いです。老健は比較的出入りがあるので入所は難しくないですが特養は空き待ちの傾向がまだまだあります。

もしそうなった場合

医学的処置をあまり必要とせず、費用面に余裕のある方、設備の充実を重視する方には、民間の有料老人ホームをおすすめします。費用面が気になる方は、サービス付き高齢者向け住宅やケアハウスあたりが無難です。

 

以上、参考になれば幸いです。