脳出血の中でも多いとされる視床出血
症状や予後は?どんな後遺症が残る?
視床出血の原因とその予防策についてもまとめてみました。
視床出血は脳出血全体の約30%を占め、その割合は増加傾向にあると言われています。
また、
被殻に次いで頻繁に出血する部位とされています(被殻出血は全体の40〜50%)
下図のオレンジの部分が視床です。
今回は視床出血の詳細についてまとめてみました。
視床出血の症状は?
左右の視床出血によって生じる症状は以下のとおりです(左が優位半球と仮定)
左視床出血の場合
- 頭痛、嘔吐
- 意識障害(出血量による)
- 眼球の内下方偏位(鼻先凝視)
視床の下にある中脳の上丘を二次的に障害するため。 - 縮瞳と対光反射の消失・減弱
- 右片麻痺
- 右半身の感覚障害
- 右手足の筋肉のこわばり(筋緊張亢進)
- 視床性失語(頻度は少ない)
右視床出血の場合
- 頭痛、嘔吐
- 意識障害(出血量による)
- 眼球の内下方偏位(鼻先凝視)
視床の下にある中脳の上丘を二次的に障害するため。 - 縮瞳と対光反射の消失・減弱
- 左片麻痺
- 左半身の感覚障害
- 左手足の筋肉のこわばり(筋緊張亢進)
- 左半側空間無視(頻度は少ない)
どちらの出血においても
発症時の「意識障害の程度」が生命予後に関わります。
予後は?
視床出血は
一般的に血腫除去術の適応はありません。内科的治療が主流です。
なぜなら、
視床のすぐ外側には「内包後脚」があり、この内包後脚には運動神経や感覚神経の繊維が集束しているため、血腫を除去しようとすればこれらの神経を損傷してしまいます。血腫除去をすることで運動麻痺や感覚障害を増悪させてしまう恐れがあるため手術は推奨されません。
補足
脳室穿破(のうしつせんぱ)したら手術?
視床出血によって血腫が脳室にまでおよんだ場合は脳室ドレナージを行います。視床は第3脳室の近くにあるので出血量が多いと脳室に血腫がおよんでしまいます。視床出血で脳室ドレナージした場合の予後について以下の記事にまとめたので参考にしてみて下さい。
【視床出血で脳室穿破したら手術適応?予後は?水頭症の合併は?】
ただ、
視床のすぐ下には脳幹(中脳、橋、延髄)があるため、「視床にできた血腫が脳幹を圧迫してしまう」恐れがあります。その場合は、生命維持のため止む無く血腫除去術に踏み切るケースもあります。
脳幹は生命維持に不可欠な機能を担っているため、視床出血後の血腫が脳幹にまで及ぶ場合は予後不良となります。その場合、意識障害が強くリハビリの進行に支障をきたすケースが多いです。
予後のまとめ
- 発症時の意識障害が軽度である場合は生命予後は良い。全般的に死亡率は高くない。
- 一般的に開頭血腫除去術はしない。
- 血腫が第3脳室や側脳室へ脳室穿破した場合は脳室ドレナージなどの外科的処置を行う。
- 血腫が大きくて脳幹へのダメージがある場合は開頭血腫除去術を行う。予後不良例が多い。
原因は?
原因はズバリ
高血圧の既往がある人です。
日中の活動的な時間帯に突然発症することがほとんどです。
【脳出血の起こりやすい季節・時間帯・場所は?】
視床に血液を送る
「視床穿通動脈」
「視床膝状動脈」
からの出血が主です。
高血圧によりこれらの血管の動脈硬化が進行すると出血のリスクは高まります。
予防するには?
もちろん高血圧対策が必須です。
食生活の見直しや適度な運動で高血圧対策をしましょう!
【継続できる手軽な有酸素運動で高血圧対策】
【7つの手軽にできる塩分制限で高血圧対策】
動脈硬化は高血圧だけでなく、高コレステロールや喫煙などによっても進行します。きちんと動脈硬化の危険因子を把握し、それらのリスクに自分があてはまっていないか確認することから始めましょう。
【自分の動脈硬化の進行度やその他の脳出血リスクを確認する】
どんな後遺症が残る?
視床は嗅覚系以外(体性感覚、視覚、聴覚)の感覚神経の中継場所です。
視床を介して体性感覚などの感覚入力が大脳皮質の感覚野へ伝達されます。視床出血により感覚の中継地点が障害されることで感覚障害をきたします。
視床出血によって生じる主な後遺症は以下のとおり。
- 顔面を含む対側の運動麻痺
- 対側の感覚障害、しびれ
- 筋肉のこわばり(筋緊張亢進)
運動麻痺や感覚障害の程度は
「出血の場所」
「血腫の大きさ」
「血腫の進展方向 (血腫が広がっていく方向)」
によって様々です。
運動神経の通り道に血腫がおよんでいなければ、発症後の超急性期に麻痺を認めるだけで、退院時にはほとんど麻痺が治っているケースもあります。
逆に
出血が少なく運動麻痺は軽度でも、感覚障害が重度であることが多いです。
その他の後遺症として、
稀ではありますが
左視床出血「視床性失語」
右視床出血「左半側空間無視」
(※ 左が優位半球と仮定した場合)
があります。
実は右視床出血や左視床出血でも後遺症は全く異なることがあるんです。
「視床性失語」は優位半球損傷(大体の人は左半球)の場合に、「左半側空間無視」は劣位半球損傷(大体の人は右半球)の場合に限ります。半側空間無視に関しては最終的に軽快するケースがほとんどです。
おわりに
被殻出血と同様に視床出血患者は非常に多いケースなのでリハビリテーションを行う療法士も熟練している人が多いです。CTやMRIなどの脳画像より的確な予後予測を立て、オーダーメイドのリハビリを提供してくれることでしょう。あとは患者自身が在宅復帰に向けてしっかりとリハビリに取り組むことが重要となります。
以上、参考になれば幸いです。
でわ。
リハビリでも片麻痺などの後遺症の回復には限度があります。今後は脳卒中の再生医療にも期待したいですね。再生医療によって麻痺した手足が動くようになった、感覚障害が軽減したという報告もあります。
【脳出血後遺症の再生医療はどうなる?麻痺を回復させるには?】
【脳出血後遺症の再生医療を受けるには?自費診療の費用や効果は?】
退院後に受けられる「リハビリの種類や費用」についてまとめた記事も参考にしてみて下さい。リハビリ難民の救世主である「自費リハビリ」についてもまとめてあります!
【脳梗塞後遺症のリハビリ費用|医療・介護・自費の3つで比較してみた】
後遺症のしびれでお悩みの方はこちらの記事もどうぞ。