脳出血の中で最も多い被殻(ひかく)出血について、
原因や症状、予後、再発リスクなど
気になる情報をまとめてみました。
被殻出血は脳出血の中で最も頻繁に発症し、全脳出血の約40%を占めると言われています。これってかなりの頻度ですよね。
ただ、頻発する脳出血であるがゆえに症例数は多く、医学的にもたくさんの情報が蓄積されています。
今回はそんな被殻出血の症状や原因について詳しく解説していきます。
被殻とは?
下の画像は脳中央部を水平に見たものです(赤色の部分が被殻)
脳の中央部に存在。尾状核と共に背側線条体を形成し、大脳基底核の一部となっている。身体の随意運動や姿勢、筋緊張の調整など様々な機能を司る。
入力:運動野と体性感覚野、視床の髄板内核、及び黒質から入力を受けている。
出力:被殻からは淡蒼球と視床を介して、大脳皮質の運動前野と補足運動野へ出力している。
これらの一連のループにより強化学習の役割を担っている。(引用一部改変:http://www.akira3132.info/basal_ganglia.html)
簡単に言うと被殻は
「姿勢や運動制御に関わる大脳基底核の一部であり、運動機能を司る中継地点みたいなもの」です。
被殻出血の症状は?
左右の被殻出血によって生じる症状は以下のとおりです(左が優位半球と仮定)
左被殻出血の場合
- 頭痛や嘔吐
- 意識障害
- 病側(左)を向く共同偏視
- 失語症(運動性失語)
- 対側(右)の同名半盲
- 右片麻痺
- 右手足の筋肉のこわばり(筋緊張亢進)
- 右側の感覚障害
【左被殻出血の症状は?右片麻痺と言語障害は治る?失語症の予後は?】
右被殻出血の場合
- 頭痛や嘔吐
- 意識障害
- 病側(右)を向く共同偏視
- 失行
- 失認
- 対側(左)の同名半盲
- 左片麻痺
- 左手足の筋肉のこわばり(筋緊張亢進)
- 左側の感覚障害
発症時の代表的な症状として頭痛や嘔吐、意識障害、共同偏視、運動麻痺、感覚障害があります(頭痛や嘔吐、共同偏視は発症時に見られるもので後遺症としてはほとんど残りません)
高次脳機能障害でも左右の出血で違いがあります。
左被殻出血では血腫量と血腫の進展方向によっては「失語症」
右被殻出血では「失行」や「失認」
が現れます。
原因は?
ずばり、
高血圧の既往がある人
です。
厳密に言うと、高血圧による動脈硬化が直接の原因となります。動脈硬化で血管はボロボロになり、破れやすくなっています。被殻出血のほとんどはレンズ核線条体動脈からの出血になります。
レンズ核線条体動脈は中大脳動脈から分枝し、レンズ核(被殻+淡蒼球)に血液を 送る穿通枝である。被殻出血はこのレンズ核線条体動脈が破綻して起こることが多い(特に外側枝からの出血が多い)脳出血の中でも被殻出血は最も多いため、レンズ核線条体動脈は別名「脳卒中動脈」とも呼ばれている。(引用一部改変:病気がみえる脳・神経)
<補足>
レンズ核線条体動脈はラクナ梗塞の好発部位としても重要視されています。被殻出血もラクナ梗塞も共に高血圧を原因としており、高血圧をきたしている患者では両方が起こりえます。このためラクナ梗塞の治療として抗血小板薬を投与する場合には、脳出血が続発する危険性が高く、厳重な血圧管理が重要となります。
ちなみに、
高血圧が原因となるため、被殻出血は日中の活動的な時間帯に起きやすいです。
【脳出血の起こりやすい季節・時間帯・場所は?】
予防するには?
もちろん高血圧対策が必須です。
食生活の見直しや適度な運動で高血圧対策をしましょう!
【継続できる手軽な有酸素運動で高血圧対策】
【7つの手軽にできる塩分制限で高血圧対策】
動脈硬化は高血圧だけでなく、高コレステロールや喫煙などによっても進行します。きちんと動脈硬化の危険因子を把握し、それらのリスクに自分があてはまっていないか確認することから始めましょう。
【自分の動脈硬化の進行度やその他の脳出血リスクを確認する】
予後と再発リスクは?
被殻出血の予後はそこまで悪くありません。
脳幹出血や視床出血と比べると、被殻出血は手術が可能なので死亡率自体は高くないんです。
被殻出血の治療選択は下記のとおりです。
- 血瞳量が31mL以下の場合:内科的治療(保存的治療)
- 血腫量が31mL以上の場合:血腫除去術
開頭 or 内視鏡下血腫除去術(急性期)、定位的 or 内視鏡下血腫吸引術(亜急性期)
出血量が多く、血腫が大きくなったとしても、血腫除去術である程度は取り除くことが可能です。発症時に大出血で意識不明だったとしても手術で危機を逃れることは多いです。
ただ、
再発リスクは高いです。そもそも脳出血を発症した人は動脈硬化も進んでおり血圧を厳重に管理したとしても病院内で再出血することも少なくありません。
【脳出血は再発しやすいって本当?再発の確率・原因・症状とは?】
出血後の超急性期は血圧の管理が非常に重要です。
血圧管理がうまくいかないと、出血部位で更に血腫が大きくなったり、反対側の被殻やその他の好発部位に再出血する恐れがあります。それによって意識障害や運動麻痺などの症状が増悪します。
もちろん退院後も血圧の管理は重要になります。高齢者の場合は、特に日頃からの血圧管理が最重要となります。
後遺症は?
前述した症状の中で後遺症として残る可能性が高いのは以下のとおり。
- 運動麻痺(片麻痺)
- 感覚障害
- 失語症(運動性失語)
- 高次脳機能障害(注意障害、失行、失認など)
片麻痺や感覚障害の程度は
「出血の場所」
「血腫の大きさ」
「血腫の進展方向 (血腫が広がっていく方向)」
によって様々です。
血腫が大きくても運動神経や感覚神経の通り道にかかっていなければ、発症後の超急性期に麻痺を認めるだけで、退院時にはほとんど後遺症を残さないケースもあります。
前述したとおり、被殻出血患者は非常に多いケースなのでリハビリテーションを行う療法士も熟練している人が多いです。CTやMRIなどの脳画像より的確な予後予測を立て、オーダーメイドのリハビリを提供してくれることでしょう。あとは患者自身が在宅復帰に向けてしっかりとリハビリに取り組むことが重要となります。
以上、参考になれば幸いです。
でわ。
退院後に受けられる「リハビリの種類や費用」についてまとめた記事も参考にしてみて下さい。リハビリ難民の救世主である「自費リハビリ」についてもまとめてあります!
【脳梗塞後遺症のリハビリ費用|医療・介護・自費の3つで比較してみた】