視床出血の後遺症で最もやっかいなもの
感覚障害・しびれ・痛み..
これらの一般的な治療法やリハビリの介入効果についてまとめてみました。
視床出血と感覚障害
視床は身体より得た嗅覚以外のあらゆる感覚情報(体性感覚、痛覚、視覚、聴覚、味覚など)を大脳皮質へと送る役割を担っています。
要するに
感覚の中継地点
みたいなものです。
この感覚の中継地点である視床で出血を起こすと対側の感覚障害を呈します。障害される感覚は以下の2つの体性感覚(表在感覚、深部感覚)が主です。
表在感覚
- 触圧覚:触れているか、押された圧を感じれるか
- 温痛覚:温かい、冷たい、痛みが感じれるか
深部感覚
- 位置覚:体の位置や姿勢を感じれるか
- 運動覚:体の関節の動きを感じれるか
- 振動覚:振動を感じれるか
しびれ・痛みの治療法
視床出血の後遺症として、
しびれ・痛みを主症状とする最も厄介な
「視床痛」があります。
中枢性疼痛の代表的なもので、視床の外側腹側核、後内側腹側核が障害されて出現する半身の耐え難い痛みのことを言います。持続的な痛みや、通常痛みを引き起こさない程度の弱い刺激で痛みが誘発されることもあります。
疼痛発生の原因は諸説あり、
- 視床中継核の破壊によるもの
- 破壊された周囲組織における機能構築の再編成によるもの
- その機能構築の再編成の影響が大脳皮質中心溝付近におよんで疼痛を生じているもの
が考えられています。
発症頻度は脳卒中発症後数日から数ヵ月で約8%と言われています。
治療法には様々なものがあります。
内科的治療
- 麻酔薬
- 抗てんかん薬
- 抗うつ薬
外科的治療
(有効性は50%)
- 大脳皮質運動野刺激術
- 脳深部電気刺激療法
- 脊髄電気刺激療法
他にも
低侵襲なものとして、
- ガンマナイフ下垂体照射術
- 反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)
- 鍼治療
- ミラーセラピー
があります。
内科的治療が効かない場合に外科的治療を選択するのが一般的です。ガンマナイフやrTMS、鍼治療でも治療効果の報告は多数あります。
幻視痛の除痛に用いられるミラーセラピーは視床痛にも効果があり、視覚による運動イメージが大脳皮質感覚運動野の機能再編成に関与し除痛効果が図れたと報告しています。
リハビリの効果は?
まず感覚障害の予後として、
発症後3ヶ月以内の回復が最もピークとなり、その後も継続的に回復は見られますが、回復の幅には個人差があると言われています。
効果的な感覚障害に対するリハビリとして王道なのが
「感覚再学習訓練」です。
患者の視覚を遮断した状態で様々な感覚入力を行い、識別課題を繰り返すことで感覚の正答性を高めていきます。用いる感覚の種類や物品、課題の難易度の設定は非常に繊細で熟練の療法士でなければ効果は得られにくいと思います。患者にも多大な集中力を要すため、適宜休憩が必要です。
また、
感覚刺激として以下の刺激を用いることもあります。
- 電気刺激
- 振動刺激
- 熱刺激
- 間欠的空気圧迫治療
感覚障害があったとしても、何かしらの感覚の手がかりを得ることができるはずです。まずはその識別できる感覚をたくさん入力していくことから始めていきましょう。
とにかく多くのものに触れて感覚を入力してあげることが重要です。